2020年7月15日水曜日

S/N比という考え方

皆さんはカメラを買う際、何を重視しているでしょうか?

好きなメーカーだから?
操作性?
AF速度・精度?
堅牢性?

それとも

画質?

「そもそも画質って何なの」

という話です。




「画質なんてどうでもいい。カメラ選びの基準にはならない」
という方は、今回のコンテンツはとてもつまらないものになるかもしれません。

という前置きをしておいて。

そもそも
「画質」
ってなんなの。

という疑問については、基本的には
・飽和電荷量(いわゆるダイナミックレンジ)
・混色(色分離)
・S/N比
といったパラメーターがあります。

「あれ。空の色とかスキントーンとかは?」
と思われる方もいるかもしれません。

空の色やスキントーンといった要素は、生のデータに対して各カメラメーカーが加えるテイスト的な要素なので、今回は置いておきます(スキントーンが綺麗にでるからカメラの画質がいい、空の青が綺麗に出るからカメラの画質がいい、とは一概に言えないため)

さて、上記で挙げた、
・飽和電荷量(いわゆるダイナミックレンジ)
・混色(色分離)
・S/N比
は、すべてにおいて気にされる方が一定数いらっしゃると思います。

飽和電荷量はそのものがダイナミックレンジに直結し、明暗差が大きなシーンなどの撮影に影響します。

これはスナップや風景、ポートレートなどあらゆる場面で重要視されることのある要素ではないでしょうか。

次に混色です。

一般的にイメージセンサはベイヤー配列と呼ばれる、赤、緑、青、緑を市松模様に並べた画素が並んでいます。

赤 緑

緑 青

といった感じです(緑が多いのは輝度を稼ぐ為)。

つまり、「赤だけを受ける画素」、「緑だけを受ける画素」、「青だけを受ける画素」が並んでいて、最終出力を作る過程で、ある画素(赤緑青の1色の情報しかない)に対して、周辺の画素から色情報を補完して写真データとして保存します。

ここで、赤とか緑とか青の画素がどうできているかというと、カラーフィルタという素子を用いて、色を分離しています。

このカラーフィルタの特性によって、色分離がよくなったり悪くなったりします。

色分離が悪いイメージセンサとは、青い空でもなんだか霞んでいたり、本当は青いのに少し紫がかる(赤要素を分離しきれていない)、などです。

最後にS/N比です。

Signal/Noise比の略で、必要な信号量に対して、ノイズがどれだけを占めているか、というパラメータになります。

1という信号量に対して、ノイズが0.5乗ってしまった場合、最終的には1.5という数値で出力され、そのうちの0.5はノイズということになります。

逆に、1という信号量に対して、ノイズが0.1しか乗らなかった場合、最終的に1.1という出力に対して0.1というノイズ成分が乗ることになります。

これは、ISO感度が低いうちは目立ちにくいのですが、ISO感度が高い(ゲインが掛かる)状態になると顕著に現れます。

全体に1という値を持つ画に対して、ランダムに0.5のノイズが乗ったとすると、1と1.5という値が全体的に現れますますが、ここに4倍のゲイン(ISO100からISO400にするイメージ)を掛けてみると、4と6という値に化けます。

ゲイン1倍の時は0.5しかなかったノイズ成分の差分が、ゲインを掛けることで2の差分になるわけです。

ISO100からISO1600にした場合は16倍のゲインです。ISO100で0.5しかなかったノイズ成分が、ISO1600では16倍の8に見えます。全体的に16という値の中で、24がぽつぽつと現れる。これが高ISO時のノイズの正体です。

ダイナミックレンジや色分離はカメラが持つものでユーザがどうこうできるものではありません。

白飛び、黒つぶれを抑える為に露出の調整はできても、そもそもダイナミックレンジを変えることはできません(拡張ISO感度を使わない、などの例外はありますが)。

ただし、S/N比についてはユーザ側での調整が可能です。

つまり、Signal(本来取り出したい情報)をNoiseに対して大きく見せてやれば、ノイズは目立たないのです。





ここで本記事初めて、やっと画像が登場しました笑

上記の2枚は、いずれもα7Rivを用いてISO102400(α7Riv最高感度)で撮影したものです。

同じISO感度でも、ノイズ量がまったく違うのが分かるかと思います。

1枚目は、絞り値F2.8、SS1/8000の適正露出で撮影したもの。
2枚目は絞り値F9、SS1/8000のアンダーで撮影したものを現像にて露出補正を掛けたものです。

シャッタスピードが同じなので、イメージセンサが発生するノイズ量は基本的に同じです。
それに対して、適正露出で撮影したものは、Noise成分に対してSignal成分が大きい状態です(つまり、Noiseが目立たない)。

アンダーで撮影したものは、そもそもSignal成分が小さい状態に適正露出と同じNoiseが乗ります。
アンダーのままでもノイズは相当に目立つ(信号量が小さい中で大きいノイズが乗るため)のですが、現像ソフトで露出補正を行う(つまり全体的にゲインを掛ける)ことで、ノイズは更に目立つようになります。

絞り、シャッタ速度、ISO感度(人工光源を使用している場合は光源の発光量や被写体との距離)について、撮影対象によっていろんな制約が付くとは思いますが、ノイズを目立ちにくくするためには、ISO感度以外で露出を稼ぐこと(多少オーバーで取って現像で露出補正するとなおよし)でノイズを目立ちにくくすることができますよ、という話でした。

※スポーツ撮影などはF8固定で運用したりしますが、ピント精度を多少犠牲にしてF5.6で運用するなど


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